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性同一性障害とは、性自認(心の性)と身体的性が一致しない状態を指す医学用語です。性同一性障害では、こうした性別の不一致感によって、落ち込んだり、悩んだりと気持ちが不安定なまま過ごすことになり、日常生活に困難を抱えている人も少なくありません。
性別の不一致感に悩み、身体的特徴を少しでも性自認に合わせようと希望するときは、ホルモン療法を行います。さらに希望があれば、外性器等に外科的に手を加え、性自認の性別に近づける「性別適合手術」を行うことがあります。男性が女性への性別適合手術を求めるときには、精巣摘出術、陰茎切除術、造膣術、外陰部形成術をします。一方、女性が男性への手術を求めるときには、第一段階として、卵巣摘出術、子宮摘出術、尿道延長術、膣閉鎖術を行い、第二段階として、陰茎形成術を行います。
手術を行い、外見的には性自認の性別に限りなく近づいたとしても、戸籍上の性別が変更されないと、手術を受けた人のQOL(生活の質)は高まらないことになります。そこで、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が平成15年7月10日に制定され、2004(平成16)年7月から施行されて、戸籍上の性別の変更が可能となりました。
特例法では、家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当する者について、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができることとなりました。①20歳以上であること、②現に婚姻をしていないこと、③現に子がいないこと、④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること、⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。(令和4年4月1日に成人年齢が18歳に引き下がったので、性別変更の要件も18歳以上となりました。)その後、2008(平成20)年に、これらの条項のうち、③「現に子がいないこと」を「現に未成年の子がいないこと」と変更され、平成20年12月18日に施行されました。
性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには、生殖能力をなくす手術を受ける必要がありましたが、手術を受けるのは、健康上のリスクもあり、費用も高額で、入院や療養にも長い時間がかかり、体への負担も大きいことから、社会人として生活しているなかで、長期間休みをとることもできず、性別適合手術はできないというトランス女性から、、「手術の強制は重大な人権侵害で憲法違反だ」として、手術無しで性別の変更を認めるよう家庭裁判所に申立てをしましたが、家庭裁判所と高等裁判所は認めませんでした。
申立者は、男性として出生したが、その後、性同一性障害と診断され、社会人として働き始める前には男性の名前から女性の名前に変え、職場でも女性として働いていました。また、長年のホルモン療法の結果、病院からは「男性としての生殖能力はなし」という診断も受けていました。しかし、社会生活上の性別と戸籍上の性別が異なることで、日常生活の中で生きづらさを感じることがありました。家を借りたり、役所で手続きしたりする際は、性別の記載がある保険証やマイナンバーカードの提示を求められることが多く、その都度、戸籍上の性別との違いを説明することを求められました。また、過去には、アルバイトの面接で「前例がない」とか「更衣室のロッカーを使うほかの人が嫌がるから」などといったことを理由に不採用とされたこともありました。こうしたことが繰り返され、生きていくことから逃げ出したいと思ったことが何度もあったそうです。
最高裁判所大法廷は、2023(令和5)年10月25日、生殖機能をなくす手術の要件について「憲法が保障する意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」と指摘し、憲法違反だと判断しました。手術要件は、変更前の性別の生殖機能で子どもが生まれると混乱が生じかねないという理由から設けられていましたが、最高裁大法廷は「親子関係の問題が生じるのは極めてまれで、立法措置などで解決できる」として、制約の必要性が低減していると指摘。一方、手術無しで性別の変更を認めるように求めた当事者の申立てについては、「変更後の性別に似た性器の外観を備えている」という別の要件について審理を尽くしていないとして、高等裁判所で審理をやり直すよう差し戻しました。
最高裁の決定からおよそ9か月後の2024(令和6)年7月10日、やり直しの審理を行っていた広島高等裁判所は、性別の変更を認める異例の決定を出しました。高裁決定は、まず外観要件の目的について、公衆浴場など性器が他人の目に触れる場所で生じる「社会生活上の混乱の回避」にあるとして、正当性があると指摘。だが、特例法の施行後、医学的な検討を経て、手術が必要かは人によって異なるとされている点などを重視。性別変更には常に手術が必要と解釈すれば、意思に反して体を傷つけられる手術を受けるか、性別変更を断念するかという二者択一を迫ることになり、「過剰な制約で違憲の疑いがある」との判断を示した。その上で外観要件について「他人が見て特段の疑問を感じない状態であれば足りる」との解釈を示した。申立人は手術を受けていないが、ホルモン投与で女性的な体になっているとして外観要件を満たすとし、女性への変更を認めました。なお、この高裁の判断は、他の裁判所の判断を拘束はしません。
性別を変えるのに手術は必要なのかについては、当事者や支援者、それに政治家などの間でも様々な意見があります。性的マイノリティーの当事者などで作る「LGBT法連合会」は、「望んでいない人にまで手術を強いる形になっている今の法律は人権侵害だ」などとして、手術を迫る要件の撤廃を求めています。
一方、女性の安心安全などを守ることを目的として活動している「女性スペースを守る会」などは「要件がなくなると手術を受けていなくても医療機関の診断で性別変更が可能になり、女性が不安を感じるほか法的な秩序が混乱する」として要件の撤廃に反対しています。このように、性的マイノリティーに対する理解が以前よりも進んだといわれる現在でも、意見が分かれているのが現状です。
次回は、性的同意について、書いてみたいと思います。