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キス、爪痕や歯痕をつけることに関しては、これらは欲情の高まったときに行われるものであるから、順序の前後はない、と教えています。主として性交の前に行われますが、性交の間にも行われ、欲情が昂進すれば、順序も時も顧慮しないで行われるものであるから、これらは、いつでも身体のどこにでも行うべきである、と。
ただし、初めてのセックスにおいては、まだ欲情が高まっていない女性に対しては、これらを甚だしく、かつ交互に行ってはいけない、と教えています。その後においては、欲情を昂進させるために、極めて急激に、かつ特に繰り返して行うべきである、と。
キスは、額、髪、頬、眼、胸、乳、唇、口中にすべきであり、さらには、鼠径部、腋窩、下腹部も有効で、欲情の勢いにより、身体のあらゆる部分に口戯をすれば良い、と教えています。ただし、すべての人がこのようにすべきではない、とも。
処女に対するキスは、慎重なキス、痙攣的なキス、押しつけるキスの三種類が良いそうです。女性が無理に促されて、男性の唇に自分の唇を合わせるけれども、唇を動かさないで行うキスが、「慎重なキス」です。
女性が少し大胆になって、自分の口に押しつけられた男性の唇を捕らえようとして、自分の下唇をビクビク動かすけれども、上唇を動かさないのが「痙攣的なキス」です。女性が目を閉じ、手で男性の眼を押さえ、男性の唇を少し咥えて舌の先端で押しつけるのが「押しつけるキス」です。
キスの種類として、ほかに、同位、斜め、揺動、圧迫の四種類があります。また、「締め付けるキス」というのもあって、これは、指で女性の唇をつまみ、咬むことなく唇の丸みで咥え締め付けるというものです。
このようにして、下唇にキスをするようになったら、男性は遊戯を始めると良いそうです。
女性がキスを欲するときは、男性は、女性の上唇を咥えると良い、そして、男性が舌で女性の歯や舌に触れると良い、と教えています。
身体の他の部分にするキスについては、キスをする場所によって、「抑制したキス」「押しつけるキス」「吸うキス」「軽いキス」というのがあります。
このほかにも、いろんなシチュエーションのキスがあって、眠っている男性の顔を覗き込んで、女性が自分だけのためにするのが「情熱の点火」というキスです。
男性が何かに熱中しているとき、男性が他のものを見ているとき、男性の気を引こうとしているとき、うつらうつらしている男性の眠気を払いたいときなどに、女性からするキスが「激励のキス」です。
夜中遅く来た男性が、寝床に眠っている女性に対して、男性の満足のために行うのが「覚醒キス」です。女性は、わざと寝たふりをすると良いそうです。男性に対して女性の方からすり寄って、男性の腿や足指にするキスが「挑発的キス」です。
性的恍惚感の車輪が転廻するとき（欲情が昂進したとき）には、情熱の強い男女は、相手に爪痕をつけるのだそうです。爪痕を付ける場所は、腋、乳、脛、背、陰部、腿など。
乳房の上に湾曲した爪痕を付けると「半月爪痕」、下腹部や鼠径部に湾曲した爪痕を二つ互いに向かい合わせると「環状爪痕」、線状の爪痕を乳頭に至るまで付けたのが「虎の爪」、五本の爪で乳房を掴むようにして乳頭に向けて引いた線状の爪痕が「孔雀の脚」です。このように、爪痕の形状によって、いろんな種類があります。
爪痕の種類は無数であり、この技巧に熟練する方法は無限であり、この技巧の習得は誰にでもできることであり、この技巧は情熱の高まった際に行われることから、誰しも種々の仕方を知り得ようか、と記述されています。
爪痕は、女性の身体の秘密の部分に、自分を思い出させるために、また自分に対する情欲を増加させるために付けるものであることから、特殊な爪痕を付けると良い、教えています。ただし、人妻である女性には爪痕を付けてはならない、とも。
歯咬に関しても、上唇、口腔内部、眼を除いて、キスの場合と同様、と教えています。歯の美点としては、同じ大きさであること、外観が滑らかであること、色が褪めていないこと、適度な大きさであること、裂け目がないこと、先端が鋭いこと、とされています。形が揃っていないなどは、欠点とされています。
歯咬の種類には、隠微な歯咬、珊瑚と宝石、宝石の鎖、千切れ雲などがあります。咬んで皮膚に甚だしい赤みを与えることなく、殆ど元の色のままであるのが「隠微な歯咬」、唇と歯で咥えて咬むことによって歯痕を付けるのが「珊瑚と宝石」、すべての歯で咬めば「宝石の鎖」です。
斑点状の歯痕は、二つの歯で皮膚を少し咬み取ることによって生じ、すべての歯を使うと点線上の歯痕が生じます。このような線状の歯痕は、首、腋、鼠径部、大腿部に行うと良い、と教えています。
次回は、カーマ・スートラの性交の仕方について、詳しく書いてみたいと思います。
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