避妊方法にはたくさんの種類がありますが、どの方法でも避妊率が100%というものはありません。日本で最もポピュラーな避妊方法であるコンドームの一般的な使用での避妊率は82%、正しく使用していれば98%です。(失敗率2~18%)
(失敗率は、使用開始1年間で「理想的な使用」~「一般的な使用」:バイエル薬品)
コンドームをつけても妊娠してしまうケースは、①コンドームを装着するタイミングの遅れ、②コンドームの破損、③性交後の精液の漏れ、等があります。
コンドームを付ける正しいタイミングは、射精直前ではなく勃起してからです。射精前でも、クーパー液と呼ばれる分泌物(いわゆる我慢汁)に精子が含まれており、一度ナマで挿入して射精直前にコンドームを装着する場合は、妊娠する可能性があります。
正しいタイミングで装着した場合でも、射精後に後戯などで女性の膣に挿入したまま長い時間を過ごすと精液が漏れ出す恐れがあります。
射精後に小さくなったペニスとコンドームの間から漏れ出したり、抜く際にコンドームが外れることがあります。射精後は速やかに手で根本を押さえてペニスを抜きましょう。
また、勃起した直後に装着して、しばらく経ってから膣に挿入する場合も危険です。挿入までの間にペニスとの隙間に空気が入り、途中で外れたり浸み出した精液が漏れたりすることがあります。このように、装着するタイミングで失敗率は上がってしまいます。
コンドームの破損は、多くの場合は女性のネイルや、男性の乱暴な扱いによる装着での破損です。破損するとそこから精液が漏れ出してしまいます。
また、射精後にそのままセックスを続けていると、精液が漏れ出す恐れがあります。射精後は速やかに性交を終了し、コンドームを外すようにしてください。
続けてセックスをしたい場合は、一度体を洗って、新しいコンドームを装着して行いましよう。
なお、コンドームは男性に協力してもらわなければ成立しない避妊方法です。妊娠を望まない場合は、男性任せではなく、女性が自分の意思で避妊できるピルや子宮内避妊具などの確実な避妊方法を選択することが賢明です。
その上で、性感染症の予防のために、コンドームを併用しましょう。
コンドーム以外の避妊方法には、経口避妊薬、子宮内避妊具、殺精子剤、基礎体温法、ぺッサリー、避妊手術など、様々な方法があります。使用方法と避妊率について書いてみます。参考までに、ナマでする場合の妊娠確率は85%(妊娠しない確率は15%)です。
○経口避妊薬(低用量ピル)
経口避妊薬は、エストロゲン(卵巣ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンに似た成分を配合した薬を毎日服用することで、排卵が起きないようにします。薬によって、偽薬を含めて毎日飲む方法と一週間中断する方法があります。
服用すると、妊娠したときと同じホルモンバランスになり、脳が妊娠したと勘違いをして排卵が止まります。(4週に1回の月経はあります。)
ピルは、排卵を人工的に抑えることができるので、生理不順や月経前症候群(PMS)の改善、子宮内膜症や子宮体ガンなどの治療に使われることもあります。
正しく服用した場合の避妊率は99.7%ですが、飲み忘れたり飲む時間が不規則だと避妊効果が下がります。一般的な使用での避妊率は91‰です。(失敗率0.3~9%)
メリットとして、女性主体で避妊ができることのほかに、月経周期が規則的になる、生理痛が軽減される、生理時の出血量が減少する、肌荒れ・ニキビが軽減される、子宮内膜症・子宮体ガン・卵巣ガンの発症頻度が低下する、などのメリットがあります。
服用開始時に軽い体調不良が出る場合があるほか、血栓症などの副作用があります。
○子宮内避妊具(銅付加IUD)
銅イオンを放出するプラスチック製の小さな器具を子宮内に入れることで、受精卵が着床しないようにする方法です。
コンドームはパートナーの男性の協力が不可欠で、経口避妊薬は毎日薬を飲む必要がありますが、子宮内避妊器具は女性主体で避妊でき、薬を飲み続ける必要もありません。
リング状・ループ状・コイル状など様々な形があります。装着は医師により行われ、子宮内に挿入しておくと、体機能として異物排除機能が働き、受精卵の着床を妨げます。
一度装着すると3~5年間は使用し続けることができますが、年1回は検診を受ける必要があります。
避妊率は約99%以上(失敗率0.6~0.8%)と言われていますが、人によっては不正出血や過多月経が生じる可能性もあり、位置がずれるリスクもあります。
メリットは、授乳中でも使用可能で、子宮体ガン(子宮内膜ガン)のリスクが低下します。
次回は、避妊方法と避妊率の続編です。