主な性感染症について、病原体、感染経路、潜伏期間、症状、治療方法、放置した場合にどうなるか等を、「性の健康医学財団」の資料等を参考にまとめてみました。
梅毒
病原体は、梅毒トレポネーマ。
感染経路は、性的接触による皮膚や粘膜の病変との直接接触。潜伏期間は約3週間。
症状は、感染した部位(性器、口など)に赤色の堅いしこりやただれができ、近くのリンパ節が腫れる(第1期)。その後3~12週間くらいの間に、発熱、全身倦怠などの全身症状とともに、皮膚に様々なタイプの発疹が現れ(第2期)、さらに10~30年の間に心臓や血管、脳が冒される(第3、4期)。
治療は、抗菌薬(主としてペニシリン系)。治療期間は2~3か月程度。
放置すると、第1期から2期、3・4期へと徐々に進展する。精神神経異常や、死に至ることもある。母体の感染により、出生児が先天梅毒になることがある。
淋菌感染症
病原体は、淋菌。
感染経路は、性的接触による粘膜との直接接触。潜伏期間は2~7日。
症状は、男性は排尿時の痛みと濃黄色の膿尿、女性はおりものや不正出血。ただし女性は、通常は痛みは感じないし、症状が軽くて、気づかないことも多い。オーラルセックスによるノドや肛門性交による直腸の感染もあるが、自覚症状がなく気づきにくい。
治療は、抗菌薬。ただし各種の抗菌薬に対して耐性率が高くなっている場合もある。治療期間は最低1週間。
放置すると、不妊の原因になることがある。
感染した母体から出産した新生児が淋菌性結膜炎になることがある。
性器クラミジア感染症
病原体は、クラミジアトラコマティス。
感染経路は、性的接触による粘膜との直接接触。感染する可能性は非常に高い。潜伏期間は1~3週間。
症状は、男性は排尿時の痛みや尿道掻痒感、女性は症状が軽く無症状のことも多い。
治療は、抗菌薬(マクロライド系、ニューキノロン系が中心)。治療期間は最低2週間。
放置すると、不妊、流産・死産の原因になることがある。
性器ヘルペス
病原体は、ヘルペスウイルス。
感染経路は、性的接触による皮膚・粘膜の病変との直接接触。潜伏期間は2~10日。
症状は、初めに性器の痒み、不快感があり、のちに水泡、びらんが発生。触ると我慢できないほどの痛みがある。
治療は、抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)。
放置しても2~4週間で自然に治る。ただし、ヘルペスに一度感染するとウイルスを死滅させることができないため、再発を繰り返すことが多い。なお、再発を抑える治療を行うことは可能。
尖圭コンジローマ
病原体は、ヒトパピローマウイルス(注:子宮頸がんとは型が異なる)。
感染経路は、性的接触による皮膚や粘膜の病変との直接接触。潜伏期間は3週間~8か月。
症状は、性器・肛門周囲などに鶏のトサカのような腫瘤。
治療は、レーザーによる焼却、抗癌剤軟膏の塗布。
放置すると20~30%は3か月以内に自然治癒。ただし悪性転化があり得る。
ヒトパピローマウイルスは、女性のほとんどが一生に一度は感染するといわれているウイルス。セックスによって感染するが、ほとんどの場合は免疫力によってすぐに消滅する。しかし、まれに消滅せずに残ってしまうケースがあり、そのまま放置すると良性の場合は尖圭コンジローマの原因となり、悪性の場合は子宮頸癌の原因となる。
膣トリコモナス症
病原体は、膣トリコモナス原虫。
感染経路は、尿道や性器からの分泌物との接触。下着やタオルやトイレの便座などからの感染もある。潜伏期間は不定。
症状は、男性は自覚症状のないことが多い。女性は自覚症状に乏しいが、おりものの増加、陰部・膣の刺激感や痒み。
治療は、メトロニダゾール。軟膏の塗布や内服薬。治療期間は最低1~2週間。
放置すると再発、再燃する。放置しても治ることはない。
性器カンジダ症
病原体は、カンジダ属の真菌。
感染経路は、性的接触。感染しても必ずしも発症しない。潜伏期間は不定。
症状は、男性は症状が出ることは少ない。女性は陰部が赤く腫れ、痒みなど。
治療は、抗真菌剤の膣錠や軟膏・クリーム、経口薬。治療期間は最低1週間。
放置すると、症状の継続、再発、再燃。放置しても治ることはない。
カンジダという真菌は、体内に常在するといわれており、ストレスなどの体調の変化によって自然発症することがある。カンジダは女性の方が発症する確率が高い。
長くなってしまったので、残りは次回にします。
(以上)