銭湯では、男女別に浴場が設けられており、混浴禁止ですが、例外的に、幼い子どもは親と一緒でないと危ないので、異性の親と一緒に入浴することがあります。この場合は混浴ということになります。
地方自治体の制定する公衆浴場条例により、子供については、混浴禁止の例外とすることが可能な年齢の上限を設けています。地方自治体によっては上限が明記されていないところもありますが、ほとんどの地方自治体で年齢の上限を設けています。子供が異性の親と一緒に公衆の浴場に入る場合の上限年齢は、地方自治体の制定する公衆浴場条例により異なります。
年齢の上限が設けられている理由は、子供が一人でも入浴可能な年齢であること、犯罪を未然に防ぎ、犯罪から子供を守るため、とされています。地方自治体により年齢の上限にバラつきがあるのは、子供が1人で安全に入浴できる年齢には個人差があるためのようです。現実的には、条例で定められた上限年齢に限らず、子供が一人で安全に入浴できると判断できる場合は、同性のお風呂が好ましいでしょう。
また、年齢制限は、盗撮や小児への性的愛好者などの犯罪から子供を守るためにも必要なことです。年齢的には子供だと思っていても、体の発育が早い子や、異性に興味を持ち始めている場合などは、周りが気にする場合もあります。安全かつ健全に温泉を楽しむために、公共の温泉施設では、「年齢の上限」の判断基準や理由を理解した上で利用することが必要です。
従来、厚生労働省の公衆浴場における衛生等管理要領では、乳幼児に対する配慮として「おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと」とされていましたが、「混浴を恥ずかしいと思い始める年齢は6~7歳が多い」との研究結果を踏まえ、2020年12月、これを「おおむね7歳以上」に引き下げ、各自治体に通知しました。これを受けて、都道府県や政令市など保健所の設置自治体ごとに条例で定めている年齢制限が変更されることになります。
研究結果によると、全国の7~12歳の男女1500人を対象にしたアンケートで、異性の浴場に水着なしで入るのを「恥ずかしい」と思い始めた年齢は「6歳」が27%で最も多く、「10歳」は4%でした。成人男女3631人のうち、「年齢制限が必要」と回答したのは8割超に上っています。
制限の見直しについて、研究を実施した大学教授は、「公衆浴場でのトラブル防止や、子どもたちが望まない混浴の回避につながる」と説明しています。
厚生労働省の通知より前に、大阪府の公衆浴場組合は、同級生同士が混浴になるトラブルなどを避けるため、2016年から小学生以上は男女別々の浴場に入るよう啓発するポスターを作製し、周知してきており、すでに多くの浴場で小学生以上の混浴は自主的に制限されています。厚生労働省の通知を受けて、大阪府は、現行の「おおむね9歳以下」から「6歳以下」に引き下げる方針を固めています。
東京都では、条例で定める混浴の対象年齢を「9歳以下」から「6歳以下」に変える方針を固めました。東京都は、年齢を引き下げる条例改正案を早ければ6月の都議会に提出する予定です。
一方で「事業者に任せるべきだ」などとして制限が元々なく、通知を受けての対応も取らない県もあります。温泉地が数多い九州では、自治体によってばらつきが出ています。
福岡県内では、県と福岡、北九州、久留米の3市が厚生労働省の通知を受けて「7歳以上」に引き下げる条例改正案を、開会中の県議会や市議会に上程しました。可決されれば7月から施行されます。
一方、嬉野市や武雄市など有名な温泉地を抱える佐賀県は、そもそも条例に年齢制限を明記していません。県によると、2003年までは制限を定めていたが「衛生面ではなく風紀上の問題。事業者の判断に任せるべきだ」として撤廃しています。厚生労働省の通知を受けて再設定する予定はなく、担当者は「一度削除したルールを復活させても事業者側が戸惑う」と話しているそうです。
同じく国内有数の温泉地である大分県は、現行の「10歳以上」から引き下げを検討中です。鹿児島県は「7歳以上」、長崎県は「おおむね7歳以上」とする条例改正案を議会に提出しています。熊本県や宮崎県は、以前から「8歳以上」と定めており、「年齢差が小さい」などとして改正は予定していないそうです。
佐賀県嬉野市の公衆浴場「シーボルトの湯」では、小学生とみられる子どもには混浴しないようお願いし、家族向けに貸切風呂を案内しているそうです。北九州市内のある温浴施設では、利用客から「女湯に大きな男の子がいる」などの苦情があったことから、身長120センチ以上の子どもは混浴を禁じる独自のルールを設定しています。
子ども自身がどう思うかという基準もありますが、他の異性がどう思うかの配慮も必要でしょう。7、8歳の男児を連れた母親が「1人で男湯に入れるのは難しい」と思っていても、体格の良い男児だったり、女性の裸に興味を持ってジロジロ見る男児だった場合は、他の女性が嫌がることもあります。