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セックスにおいて、一方的な行為では、お互いに快感は得られません。身勝手な男性の中には、女性を単なる欲望処理の道具とみなして、一方的に挿入、射精し、自分だけ満足してこと足れりとする人がいます。しかし、こうしたセックスでは、本当の深い充足感は得られません。
セックスは、男女の共同作業です。男性だけがひとり荒々しく振る舞っても、女性は快感を感じることはできません。より充実したセックスを実現させるためには、男女の「和」が必要です。
これについては、房中術の「和志」（わし）の「洞玄子」（どうげんし）に、次のような記述があります。
「もし、男がその気でも女が応えなかったり、反対に女がその気でも男がそっぽを向くならば、それは男にとっても、女にとっても、身のためにならない。これは、陰陽の運行がうまくいっておらず、天地上下の動きにも狂いが生じているからである」
また、同じく、「玄女経」（げんにょきょう）で、玄女が黄帝に次のように答えています。
「陽は陰を得なければ喜びませんし、陰は陽を得なければ高ぶりません。男のほうが交わりたいと欲しても、女が楽しくなかったり、女が交わりたいと欲しても、男にその気がなければ、陰陽二つの心が和まず、精気は感応しません。加えて、急に粗暴な行為をしても、快感を得ることはできません」
つまり、房中術は、「二人の心が一致しないままセックスをすると、精力は弱くなるだけだ。こんなときに結合してはいけない。セックスには和が大切だ」と教えています。
たとえ男性側が、いくら欲望して興奮していても、女性の側はさっぱり、ということは往々にしてあります。キスをしても、女性が体を寄せてこない、いくら愛撫してもさっぱり濡れず、舌の動きも鈍い。
こんな時に無理に行為に及んでも、女性は苦痛に感じるだけです。また、男性の方も喜びがありません。それに気づいたら、無理強いするようなことはせず、女性の気持ちを尊重しましょう。これは、ごく当然のことです。
房中術が成立したのは、女性に比べて男性が優位に立っていた時代です。それにもかかわらず、房中術では女性の性感を尊重すべきだと主張しています。セックスは、男女が心理的にもしっくりと合致しなければ、より深い性の喜びは得られないことをよく知り抜いていたからでしょう。古人の性知識の奥深さには驚かされます。
房中術がいうように、「陰陽二つの心が和み、精気が感応」したセックスをするためには、男性は、女性の欲望について知ることが大事です。それには、女性の欲望が高まる周期を見極めることが必要です。
いつでも欲情することのできる男性と違って、女性には欲望が高まる周期があります。いわゆる「感じやすい日」「男性が欲しくなる日」があります。どんなに難攻不落な女性でも、この周期に合わせてアタックされると、意外なほどたやすく陥落してしまうことが多いです。
排卵期にある女性の体は、生理的に男性を受け入れることを拒絶しない態勢にあり、また心理的にも、男性を求める欲望が強まっています。
女性の膣内は、排卵期の周辺になると、頸管粘液が増加し、非常に挿入しやすい状態になってきます。頸管粘液とは、精子の通過性をより高めるために、子宮頸管部の粘膜から分泌されるトロッとした液体です。排卵の日を挟んで、前後二日くらい、合わせて五日間ほど、多量に分泌されます。この頸管粘液が分泌されている期間は、ペニスが挿入されやすく、かつ妊娠しやすい時期です。この期間は、女性は、心理的にも生理的にも、男性の精子を受け入れやすい態勢になっています。
排卵期を挟んで、月経周期のうち前後二回、エストロゲンという女性ホルモンが多く分泌されるときがあります。排卵までに一度分泌量が高まり、排卵の直前で低くなります。そして、排卵が終わると、再び高まります。エストロゲンの分泌には、上昇期と下降期がありますが、女性の性行動は、この上昇期・下降期のいずれかに大胆になるようです。つまり、エストロゲンの血中濃度が急激に変化するときに、女性は性的な欲望を強く感じるようです。
排卵期の女性は、欲望が高まっていると思って差し支えありません。女性と和合しようと思ったら、その人の生理周期をよく知っておき、それを考慮して、女性にセックスを求めるとよいでしょう。
女性の排卵期については、一般に誤解があるようですが、排卵は月経が終わってから一週間後だと思い込んでいる人が多いようです。実際には、排卵は、次の月経が始まる十四日前に起きます。月経が終わってから排卵が起きるのではなく、排卵が起きてから十四日後に月経が始まります。月経周期には個人差がありますが、排卵が月経の十四日前というのは、誰でもほぼ同じです。相手の月経周期を考慮して、アタックしてみましょう。
次回は、房中術がいう「セックス前の心得」について、書いてみたいと思います。
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