最近、梅毒に感染する人が急増しています。目立って増えているのが、異性間の性的接触による感染で、女性は特に20~30代の若い世代、男性は20~50代の幅広い世代で急増しています。
特定の世代での増加の原因について、はっきりとしたことはわかっていませんが、性風俗で働く人やその利用者の間で感染が広がっていることが指摘されています。
報告によると、梅毒の届け出の際に、性風俗産業で働いている人や利用したことがあるという報告が増加しているとのことです。
梅毒は、キスやオーラルセックスだけでも感染することがあります。コンドームを使ってセックスをしたから大丈夫というわけではありません。心当たりがあれば早期発見・早期治療がポイントです。
梅毒は梅毒トレポネーマが原因菌です。感染した人の症状が出ているところ(病変部)や、精液、血液、膣分泌液などに存在します。性行為によって、これらが皮膚や粘膜の小さな傷から侵入することによって感染します。
主な感染ルートは、バリア(コンドーム)なしの膣、ペニス、肛門、口の性的接触です。
セックス以外では、お風呂やサウナなどで菌を持った人が椅子やタオルの上に座った後に、時間を置かず直ぐそこに座って粘膜と菌が出会って、運悪く感染するというパターンもあり得ます。そのほか、血液がついた注射の針を刺すなどの血液曝露もあります
アナルセックスでの感染が特に多いと言われています。口に梅毒の病変部がある場合はキスでも感染します。唾液に病原菌が含まれている場合もあります。一回の性行為で感染する確率は20%以上とも言われています。
オーラルセックスでの感染は、ペニスに病変部がある人にフェラをしたときは、自分の口唇や口内に感染する可能性があります。口唇や口内に病変部がある人にフェラをされたときは、自分のペニスに感染する可能性があります。クンニであっても同様の感染経路が考えられます。
梅毒の病変部が目で見て確認できれば予防することができますが、アナルセックスの場合は直腸の中を確認できないのでリスクは高まります。さらに、直腸は傷つきやすく病原菌が侵入しやすくなっています。
梅毒の症状は、性器や全身の皮膚に「できもの」ができるのが特徴で、3週間後、3か月後、3年後に、症状が出たり消えたりします。無症状の場合もあるので、要注意です。
第1期梅毒 感染して約3週間後
感染した箇所に小豆~指先くらいの大きさのしこりができます。軟骨のような硬さです。その後、しこりの中心部が硬く盛り上がります。一般的には痛みのないしこりとされますが、痛みを感じる場合もあります。これらの症状は、放置しておくと2~3週間で消えます。
第2期梅毒 感染して約3か月後
小豆~えんどう豆くらいの大きさの赤茶色の隆起。手のひらや足の裏に、銀白色のフケのようなものがついた、赤茶色の濡れた発疹。体や顔、手足にピンク色の円形のアザ(バラ疹)。肛門周辺や性器などに、ピンク色~薄い灰色のイボ(扁平コンジローマ)。喉や扁桃が赤くなる、腫れる、ふやける。頭髪や眉毛が抜ける。これらの症状は、3か月から3年続き、自然に消えます。その後しばらく、無症状が続きます。
第3期梅毒 感染して約3年以上経過
皮下組織に大きめのしこり。これは、結節性梅毒疹やゴム腫などと言われます。
第4期梅毒 末期症状
心臓、血管、神経、目などに重い障害が出ます
梅毒は、治療薬ペニシリンが発見されるまでは、不治の病として恐れられました。基本的に自然治癒することはありませんが、今は早期治療で完治します。早期発見・早期治療が重要です。パートナーの感染率も高いので、2人同時の検査や治療が必要です。血液検査は、感染の機会から1か月後からできます。3か月経過後の検査で陰性であれば感染していないと考えられます。
治療は、症状に応じて2~12週間、抗菌薬(抗生物質)を服用します。
抗菌薬を飲み始めると、数時間で発熱・悪寒・頭痛などの症状が出ることがあります。これは、薬の副作用ではなく、梅毒トレポネーマが破壊されることによって起きる現象です。
十分な治療をしても、効果の確認に時間がかかることが多いので、定期的な診察や検査で完全に治ったことを確認することが必要です。
梅毒に感染しているとHIV(エイズウイルス)にも感染しやすくなるため、HIV検査もあわせて受けることが望ましいとされています。
梅毒の予防については、コンドームはそれなりの効果はありますが、コンドームをしていても、性器以外の病変部との接触により感染する可能性があります。
確実に予防するためには、検査をしてお互いに感染していないのを確認することが必要です。セーフティセックスに心がけましょう。
次回は、HIV感染の最近の情勢について、書いてみたいと思います。