ＨＩＶ（エイズウイルス）に感染した場合、今のところ完治することはできませんが、ウイルス増殖を抑える薬の開発が進み、薬を飲み続ければ、エイズ（ＡＩＤＳ）の発症を抑え、それまでと変わらない生活ができます。
また、エイズを発症しても治療をすれば、ＨＩＶに感染している状態に戻すことができます。エイズは、死ぬ病気ではありません。子供への感染を防ぎながら出産することも可能となりました。
感染しても薬を飲み続ければ健康な人と変わらない生活を送れるようになりますが、薬をやめると体内に潜んでいたエイズウイルスが再び活動を始めます。
ウイルスは、感染した細胞のＤＮＡに自分の遺伝子を組み込んで潜伏します。体内からウイルスを完全になくすことはできず、生涯薬を飲み続ける必要があります。
ＨＩＶ感染に対する治療の目的は、身体の中のウイルスの量を抑え続けて、進行を食い止め、免疫力を回復させて、その状態を維持させていくことです。
そして、生活の質と感染による症状を改善して、死亡数を減らすことです。
そのための治療には、抗ＨＩＶ薬（飲み薬）が使われます。
最近は、より副作用の少ない治療薬が開発されており、さらに、早期治療による様々な利点（感染拡大の抑制や重篤な合併症の減少）も明らかになってきました。
ＨＩＶ感染症の治療は、多種類の抗ＨＩＶ薬を組み合わせて内服する多剤併用療法が基本ですが、最近では、２～３種類の成分が１錠の中に含まれた合剤が多数出ており１日１回１錠内服での治療も可能となっています。また、最近の抗ＨＩＶ薬は以前のものと比べて治療効果が高いため、患者によっては２種類（１錠）の内服でも治療効果を維持できるようになりました。
抗ＨＩＶ薬は高価です。国の支援制度（自立支援医療〈更生医療〉）による医療費の補助が存在するとはいえ、制度の利用のためには「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の認定基準」を満たし、身体障害者手帳を取得しなければなりません。そして、手続きを行い様々な制度を活用しなければ、治療費の負担は大変厳しいものとなります。
なお、抗ＨＩＶ薬を中途半端に内服してしまうと、薬が効かなくなってしまいます。ウイルスが薬に対し耐性を獲得してしまうためです。ちなみに、内服１０回のうち１～２回飲み忘れただけで患者２人に１人は治療に失敗してしまいます。
抗ＨＩＶ薬の使用が始まった当初は、薬の副作用が強いこともあり、感染がわかってもすぐには治療が開始されませんでしたが、現在では、治療薬も飲みやすく、副作用の少ないものが開発されており、年々治療の開始が早い段階で始まっています。
なるべく早めに薬を飲んでウイルスを抑えることで、ＨＩＶ感染の合併症を減らして、その後の身体も安定した状態に改善できます。
しかし、薬などの治療でＨＩＶ感染症を完治することはできません。ウイルスは死滅しません。ただ、治療をきちんと続けていくことで普通の日常生活を送ることはできます。
そのためには、何より確実に指示された薬の量や回数を守って、定期的に診察に行くことが重要です。
効果的な抗ＨＩＶ治療を受けて血液中のＨＩＶ量が検出限界値未満のレベルに継続的に抑えられているＨＩＶ陽性者からは、性行為によって他の人にＨＩＶが感染することはないとされています。
最近の事例として、血液ガンの治療で骨髄移植を受けたエイズ感染者の男性から長期にわたってウイルスが検出されなくなったという報告があります。
また、マウスの実験段階ですが、ウイルス遺伝子をＤＮＡから切り出すためのゲノム編集でウイルスを完全に消滅させることに成功しています。
エイズ治療に新たな望みが出てきつつあります。
しかも、ＨＩＶの研究が日々進歩しているうえ、より効果的な薬が出てきているので、将来的には完治させることができるようになるかもしれません。
昔は不治の病というイメージがあったエイズですが、現在では様々な治療薬が開発されたおかげで、今や不治の特別な病ではなく、コントロール可能な病気です。
適切な治療によって、症状をコントロールしながら、普通の生活を送ることができるようになっています。
ただし、適切な治療を行うためには早期発見が大切です。そのためには、ＨＩＶ検査が大事です。全国の保健所などでは匿名・無料でＨＩＶ検査や相談ができるので、ぜひ利用しましょう。
不治の病ではなくなりましたが、ＨＩＶに感染すると一生薬を飲み続けなければならず、飲み忘れると薬が効かなくなってしまいます。感染予防のためには、正しい知識を理解することが重要です。セーフティセックスに心掛けましょう。
次回は、リスクがあるのにやめられない生挿入について、書いてみたいと思います。
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