ヨガ(ヨーガ)は、古代インド発祥の伝統的な宗教的行法であり、瞑想を主とするものです。本来は心身の統一によって悟りを開くための修行の方法でしたが、現代では、心身の健康増進が目的になっています。
1990年代後半から世界的に流行している、身体的ポーズを中心にしたフィットネスのような「現代のヨガ」は、宗教色を排した身体的なエクササイズとして行われています。これは、宗教的実践である「本来のヨガ」とは別の潮流です。
ヨガとは、サンスクリット語で「つながり」を意味しています。心と体、魂が繋がっている状態のことを表します。呼吸、姿勢、瞑想を組み合わせて、心身の緊張をほぐし、心の安定とやすらぎを得るものです。具体的には「調和」「統一」「バランス」を意味し、体・心・呼吸・食物など、あらゆるカテゴリーと関係しています。
姿勢と動作の異常、栄養の異常と過不足、欲望、感情の不均整と不安定、迷い、執着、誤解、生活(仕事、家庭、環境)の異常と無理、筋肉、内臓、神経、骨格など身体の異常。ヨガは、これらの異常を自分でコントロールし、修正するものです。 そのためには、意識的に行うことが大切です。
ヨガにおいては、呼吸がとても大切です。ヨガでの呼吸の目的は、①血液や脳に酸素をより多く送ること、②生命エネルギー(プラーナ)のコントロール、です。単に酸素と二酸化炭素の交換の意識に留まらず、気をコントロールするという意識で行うことで、活力と集中力が増し、心と体を統合します。
正しいヨガの実践は、呼吸が「心と体の架け橋」であることを体感でき、実践し続けることで、健康増進、精神安定、回復能力が得られ、健康な人間になることができます。
筋力がない、運動が苦手、冷えやだるさ、肩こり、むくみなどを改善したい、病院に行くほどではないけれど不快な症状に悩んでいる、女性特有の不快症状などの緩和、多忙でストレスフルな人、自分を見つめ直す時間が欲しい、リラックスしたい、自然との結びつきを感じたい、という人は、ぜひヨガを試してみてください。
ヨガの効果は、肺活量と呼吸量の著しい増大、体重減少と肥満の解消、ストレスに対する抵抗力増加、コレステロールと血糖値の低下、慢性的で再発を繰り返す腰痛の改善、などがあるとされています。
また、身体のゆがみ・くせを直す、シェイプアップ効果、姿勢が良くなる、内臓が活性化され体内環境を整える、自然治癒力を高める、内観性が高まる、集中力・感情のコントロール力の向上、慢性的な症状の緩和、肩凝り・腰痛・頭痛・冷え・便秘・更年期・月経障害などの病気の予防や改善、自律神経を調える、ホルモンバランスの調整や強化、体力や筋力の向上、老廃物を出す(血液やリンパ液の流れをスムーズに、美肌、新陳代謝が活発に)、ポジティブ心・やる気のアップ、ストレスやうつ症状の緩和・耐性向上、にも効果があるとされています。ただし、効果の現れには個人差があります。
ポーズを行うことで、日常使っていない関節・筋肉などを動かすので、脳の様々な分野が刺激され、生命力が覚醒していきます。また、呼吸に集中することで、体や心や意識面における様々な「気づき」を生み出すので、積極的な思考、忍耐力、行動力、安定力が身につき、人生を前向きにとらえることができます。
ポーズを行うことのみがヨガではありません。毎日の生活の中の一つひとつを「生き方としてのヨガ」として実践し、悪い習慣を改善していくことがヨガをしていることになります。ポーズを行う際には、「ムリ・ムダ」をせずに「痛と快の間」で行うのがポイントです。ヨガは、高度な技術や道具に執着することなく、どんな年齢の方にも今すぐに始められる健康法です。
ヨガは伝統的に性とのつながりが強く、欧米ではヨガの実践でセックスが向上するという考えはよく見られ、それを目的にヨガを行う人も少なくありませんが、日本では「美」の観念が強調され、マタニティヨガや親子ヨガなど妊娠出産という生殖を中心とした女性身体への意味づけをめぐる文脈を除き、性的な要素はほぼ完全に排除されています。
良いことづくめのヨガですが、近年、ヨガ教室で、指導者が生徒や関係者に不適切な性関係を強いたり、セクシャルハラスメントをしたり、生徒のアジャスト(姿勢の調整)の際に性的な接触を行ったり、セラピーと称して性行為や性儀式を行うといったスキャンダルが相次いで起きています。
十分に訓練されたインストラクターの指導下で適切に行われる場合、健康な人にとっては安全な身体運動であるとみなされていますが、他の運動同様に怪我のリスクはあります。最も一般的なものは捻挫と肉離れです。頭立ち、肩立ち、蓮華座、半蓮華座、前屈、後屈、倒立が最も多く負傷者を出しています。初心者は、自分の身体能力を過大評価し、十分な柔軟性や筋力を備える前に、高度なポーズをしてしまうからのようです。
血液を脳に供給する頸部動脈の裂傷である椎骨動脈解離は、首を伸ばしながら回すことで起こる可能性があり、幾つかのヨガのポーズで起き得ます。血管の裂ける場所や程度によっては、脳梗塞、脳卒中、くも膜下出血等を引き起こすと言われています。
次回は、性的エネルギーを目覚めさせることを目的とした、クンダリーニ・ヨガについて書いてみたいと思います。