MRIなどの検査によると、オーガズム中の女性の脳では、「オキシトシン生成部分」、「痛みに強く反応する部分」、「快感を生み出す物質によって活性化する部分」が活性化していることが観察されるそうです。
オーガズムによって影響を受ける脳の部位は、扁桃体 (感情の制御)、側坐核(ドーパミンの放出)、脳下垂体・視床下部(エンドルフィン・オキシトシンの分泌)などです。
オーガズムに達すると、脳では幸せホルモンと呼ばれるオキシトシン、プロラクチン、脳内モルヒネと言われるエンドルフィンなどが放出されます。
これらの脳内物質が放出されることで、女性はリラックスし、心地良さを感じます。
脳の活性部位は主に上記の3か所で、その他の部位はあまり活性化していないそうです。
つまり、知覚や思考や意識に関わる部位は相対的に低下し、感覚の鈍い状態になっているということです。
オーガズムのとき、脳では大部分の感覚が停止する一方で、苦痛と快楽とが混濁したような相反する感覚が生み出されているようです。
オーガズムに達したときに、快楽のはずなのに能の般若の面のように苦悶にも見える表情を浮かべる女性がいるのはこのためでしょう。
女性がオーガズムを感じている間に活発化する脳の構成部位の一つである島皮質と前帯状皮質は、痛みに反応して活発化する部位です。
オーガズムを感じることと痛みを感じることとの間には、相関関係があるようです。
鞭、緊縛、ろうそく責めなどの苦痛が、脳で快楽と感じることと関係がありそうです。
βエンドルフィンには鎮痛作用があり、苦痛を軽減したり多幸感をもたらすので、縄酔いと呼ばれるように、緊縛で陶酔したり、多幸感に浸れるのだと思います。
オーガズムによって活性化する視床下部の室傍核は、オキシトシンを生成します。
オキシトシンは、女性がオーガズムを感じている間に分泌量が最も多くなり、子宮収縮を刺激します。
オーガズムに達すると、理性とコントロールを担っている眼窩前頭皮質が抑制されるそうです。オーガズムのときに、理性を失い、思わぬ行動をするのは、そのためでしょう。
また、オーガズムの状態における脳の変化として、恐怖や不安や行動調節に関わる脳の領域が停止するという変化が観測されるそうです。
あらゆる恐怖や不安を非活性化すること、つまりセックスにおいて無防備になり没頭することが、オーガズムを得るために重要で必要な条件であるようです。
性感帯を刺激されているうちに、恐怖や不安や行動調節を処理する脳の部分がリラックスし、活動を低下させ始めるそうです。これは、オーガズムの時点で最も顕著となり、女性の感情中枢は実質上停止し、ほぼ昏睡に近い状態になるそうです。
性的な興奮状態にあると、神経細胞は催眠をかけられたような特殊な精神状態へと移行し、その瞬間は普段意識されるような周囲の物音や匂いなどのすべてがブロックされ、自己意識の喪失(トランス状態)が起きるそうです。
オーガズムに達した時に頭が真っ白になると表現する女性がいますが、このためでしょう。
ドーパミンはオーガズムを促進する物質で、オーガズムに達すると脳内でさらにドーパミンが分泌され、大きな快感を誘発します。
オーガズムを知った女性は、さらなる快感を求め、我慢できなくなるのはこのためです。
ドーパミンはさらなる快楽を期待する報酬系のホルモンといわれる所以です。
報酬系とは、快感を感じたときに活性化し、脳内で快楽物質であるドーパミンを放出して、人に快感を感じさせる脳のシステムです。報酬系の快感が、人をやる気にさせ、さらに快感を感じるような行動を起こさせます。
オーガズムでプロラクチンレベルが上昇すると、ドーパミンレベルは下降します。強烈な快楽を得ても、ドーパミンレベルが下降するため、危険が及ぶほどのセックスを体が求めないような仕組みになっています。
しかし、ホルモンバランスが崩れて、抑制が効かなくなると、ドーパミンとテストステロンによるオーガズムの循環作用によって、女性は快感を与えてもらうことを常に求めるようになります。これが、いわゆるセックス依存症です。
次回は、脳内麻薬と呼ばれる快楽物質について、書いてみたいと思います。